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『緑の彫刻プロムナード研修会』参加レポート

倉吉の市内各所に設置されている野外彫刻。

地元の方にとっては馴染みのある作品も多く、観光で訪れた方の中には「何だろう?」と気になった方もいるのではないでしょうか。

もしかすると、待ち合わせ場所として使ったことのある方もいるのでは。

こちらは倉吉市のトリエンナーレ美術賞の始まりである『倉吉:緑の彫刻賞』受賞作家による作品です。

なんとなく見たことはあるけど詳しく知らない、そんな野外彫刻作品たちについて知見を深めるべく、6月24日に開催された『緑の彫刻プロムナード研修会』に観光協会スタッフが参加。

倉吉博物館の根鈴館長による解説のもと、旧JR打吹駅周辺エリアに設置されている野外彫刻をめぐりました。

◉とっとり県美応援団『緑の彫刻プロムナード研修会』
【日時】2023年6月24日(日)10:00〜11:30

※それぞれの彫刻は下のページで見ることができます。
彫刻紹介(倉吉博物館HP)



研修会は野外彫刻の簡単な説明からスタート。

彫刻はオーダーメイドであること、実際に作家が現地を訪れイメージを膨らませながら制作されたものであることなどを聞きました。

季節は梅雨の真っ只中。

あちこちにアジサイの姿が見えます。


山根耕《つなぎ石》

最初に訪れたのは山根耕氏の《つなぎ石》。

石の持つ超時代性、「石は人や文明や時代を超える力を持ったカプセル」という山根氏。

周りの景観、空間にどう溶け込んでいるかというのもこのような抽象作品の見方の一つだそうです。


淀井敏夫《雲と樹、渡り鳥》

つなぎ石》に隣接する《雲と樹、渡り鳥》

先ほどのつなぎ石とは違い、具象的作品です。

ここで根鈴館長から投げかけられたのは、『この鳥をどう飛ばすか?』という問い。

少しかがんでみてください、と館長。

腰を落として鳥たちを見上げてみます。

どうでしょうか、飛んだでしょうか。

感じ方に決まりはありません。

渡り鳥、下から見るか?もっと下から見るか?

(またはそれ以外?)


向井良吉《風景の中の風景》

鉄道記念館の向かい側に設置された向井良吉氏の作品《風景の中の風景》。

野外彫刻賞で最も伝統のある宇部現代彫刻賞の創設に尽力した作家だそうです。

特徴的なのは、その荒唐なバリ。

曰く、時が経つごとに剥がれていくバリも含めて作品であり、そうした変化は「退化」や「劣化」ではなく「進化」とのこと。

設置して終わりではなく、流れる月日や雨風などの影響も作品を作り上げる要素、という考え方が面白いです。


池田宗弘《堀の内外、旅人》

鉄道記念館前で佇み、たそがれるような《堀の内外、旅人》。

この場所が駅舎であったことを想起し、旅の起点・終点であることをイメージし造られた池田氏の「ほぼ自画像」だそうです。

見つめる先は、これからの旅の始まりなのか、それともこれまでの旅の道筋でしょうか。

その時の感情によっても、見え方は変わってきます。


田中栄作《万象万物の記憶》

倉吉線鉄道記念館の壁面に設置されているこちらの作品は、何かの付合のようにも見えます。

それぞれのかたちから何を想起するでしょうか?

私は宇宙的な何かを感じます・・・森羅万象。


内田晴之《異・空間92-2》

彫刻が見え隠れするように蛇行する道。

この道を設計したのは、倉吉や東京スカイツリーにも設置されている彫刻作品「To The Sky」の作者である澄川喜一氏だそうです。

(澄川氏は安藤忠雄氏と共に東京スカイツリーのデザイン監修も務めています。)

ここは元々、旧国鉄倉吉線のレールが走っていた場所で、今は遊歩道として整備されています。

緑の中に突如現れるビビッドな赤。

異・空間92-2》と名付けられたこの作品、これまでの彫刻作品と比べても異質な感じを受けます。

このシルバーの部分、実は可動する事をご存知でしょうか。

結構、動く!


手塚登久夫《月に吠える’94》

フクロウを題材とした作品を多く残す手塚登久夫氏。

トーテムポールにも似た造形が異国の雰囲気を纏っていますが、手塚氏の自宅前にもこのようなフクロウの彫刻が置かれていたそう。


石井厚生《時空・1912年6月1日-1985年3月31日》

直線と無造作な曲線が混在する作品で、道が交差する中心に配置。

その昔、学生時代にこの道を行き来していた頃は、この作品をゆっくり避けつつ通っていました。

そんな懐かしい思い出とともに眺めます。

中に腰掛けられるようになっていますが、どんな意図があるのか?考えてみるのも面白いです。


早川巍一郎《だんらん》

かつて国鉄倉吉線が走っていたこの道、向こうに見えるのは倉吉のシンボル打吹山。

レールのあった時代、無くなった後、そして現在。

手をとり合うこの彫刻を見ていると、いくつかの時間が重なり合うような不思議な郷愁感がありました。

そして最後にこの場で、根鈴館長と澄川喜一氏の思い出をお聞きするなどして研修会は終了。

作家の意図を感じつつ、見る人や風景によって変わる捉え方を楽しみたい、そんなことを思った研修会でした。

(そして自分が感じたことをもっと言語化できると良いな、と思いました。)

倉吉博物館の根鈴館長、とっとり県美応援団の皆さま、ありがとうございました!


とっとり県美応援団『緑の彫刻プロムナード研修会』
【日時】2023年6月24日(日)10:00〜11:30

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